「赤背」でおなじみ、片岡義男の角川文庫です
が、最近古本屋でめっきり数を見なくなりまし
た。一番好きでよく読んでいる『5Bの鉛筆で
書いた』までをとりあえず揃えようと決めてか
ら、コツコツ探しはじめていたのですが、近年
の片岡義男再評価の流れからか、一時期と比べ
ると明らかに古本屋の棚から激減していて、片
岡「赤背」コレクターとしては、なかなかキビ
シく、かつ寂しい状況です。
…思わず、後回しにしていた「新潮の青背」や
ら「コバルト文庫」に手を出したりして。
my片岡赤背コレクション
で、数が増えないときは読むか並べるか(!)
するしかないので、まぁとりあえず並べるわけ
ですが(笑)、そうするといろいろ気がつくこ
とがあるので、ここではそんなお話をしたいと
思います。

ロングセラーであればあるほど、重版再版な
どで装幀にバリエーションが生じるもので、そ
れは角川文庫の片岡作品も同様です。わりと知
られているのは、前期・後期で大きくデザイン
フォーマットが違う点。新旧のバージョンがあ
るといった方がいいかもしれません。これは、
「赤背」収集の基本ですね。例として『ロンサ
ム・カウボーイ』を観てみましょう。
装幀の違い(前期/後期)
(※2冊ともうすらぼんやりしていますが、これは
保存用にパラフィン紙でカバーをかけているから)

画像(右)、タイトルを挟んで上下に写真がレ
イアウトしてあるのが旧バージョン。(左)写
真一枚のみなのが新バージョン。
確定的ではありませんが、1982~83あたりで
新バージョンに移行して行ったようです。ちな
みに『ロンサム・カウボーイ』は1979年初版
で、画像の旧本は1980年6版。新本は1985
年11版です。

この辺の時代考証学的なものは全バージョン
きっちり揃えたら自ずと明らかになるのですが、
そこはメディアミックスの先駆け・角川書店。
映画化になった『ボビーに首ったけ』や『彼の
オートバイ、彼女の島』などは新装幀版でも3
タイプあるし、ここでは触れませんが、初期作
品の中には旧装幀でも全く異なるバリエーショ
ン違いがあったりして、全容解明はなかなか大
変です。

さらに新装幀版のフォーマットそのものにも
実は前期と後期があるのです。『スターダスト
・ハイウェイ』を例に見てみます。
ssスターダストハイウェイ(新装幀後期)裏表紙
前期の新装幀カバーです。(手持ちの本は、
1985年14版)裏表紙にも写真がレイアウトさ
れています。で、後期になるとこうなります。
スターダスト新装幀後期スターダスト新装幀後期(裏表紙)
裏表紙は白いままになっています。(手持ちの
本は1986年 16版)ちなみにタイトル、著者名
のサイズも微妙に変わってます。おそらくはこ
の時期から順次マイナーチェンジされていった
ものと思われます。
いやはや、ここまで来るとさすがに「マニア
ックすぎるだろ!」とセルフツッコミしてしま
う事態です。ここまで集めないとコンプリート
じゃないの??みたいな。

ところが、さらに「赤背」の文庫のバリエー
ション云々を考えるこの記事の前提を揺るがす
ような事実も判明しています。なんと、最初期
の角川・片岡文庫は「赤背」ではなく「白背」
だったのです。
片岡義男(角川文庫)の白背
「角川の黒背」でおなじみの横溝正史本も最初
は白背だったから、さもありなんといったとこ
ろなのでしょうが、「片岡義男=赤背」の刷り
込みが強い身としては、なかなかに衝撃的。古
本屋で見かけたときは「焼けてんなぁ…真っ白
じゃん」とか思ったものです。(実際、均一コ
ーナーで日焼けして白っぽくなった片岡本も多
い)しかしよーく見ていただくと判るのですが、
タイトルの書体が全然違うのです(赤背はゴシ
ック)。今のところこの2冊しか手元にありま
せんが、もう何冊かは「白背」の片岡義男本が
あるはずですが、まぁ滅多に見かけません…

ひょっとすると、まだ知らない「何か」があり
そうでコワイですが(笑)、「赤背」収集の道
はまだまだ長そうです…   (2016.3.13)